事故や病気のために腕や足を切断したり、その機能が麻痺した人たちの生活を支える義肢や装具。その製作に日本赤十字社の施設として全国で唯一携わっているのが、千葉県支部義肢製作所です。来年で創立70周年を迎える義肢製作所は、県内の手足に障がいを持つ方にとって、無くてはならない存在になっています。
《歴史》はじまりは傷痍軍人
千葉県支部に義肢製作所が開設されたのは昭和27年。当時、千葉県内には義肢製作所が一つもなく、軍で支給された義肢が壊れると、東京にある軍の施設や民間の義肢製作所まで直しに行く必要があったといいます。戦後間もないその頃は義足や義手をつけている大半は傷痍軍人。彼らから挙がった「県内に義肢製作所を」の声が、製作所設立につながりました。
その後、事故や病気などで手足を切断した方の利用が目立つようになりますが、現在は医療技術の向上で切断しなくて済むケースも増加。一方、脳梗塞の後遺症で半身が麻痺した方が、動かない足の補助機能を持つ装具を利用する例が増えています。
義肢製作所って?
義肢製作所では、障がいのある利用者に対し、義肢・装具の相談から提案、損傷部位の型取り、製品の製作・フィッテイング、納品後のアフターケアなど、義肢・装具に関わる全般をサポートしています
義肢とは
失われた部位を補助するものです。
大別すると義足・義手に分かれます。また、切断した部位によって細かく名称が分かれます。
装具とは
失われた機能を補助するものです。
例えば足首が動かず歩きにくいなどの問題を軽減させる目的で使います。疾患部位や症状によりさまざまな装具があります。
義足はどのように作られるの?
1患部の形状を採寸し型をとる
2型に石膏を流し込んでモデルを作る
3型取りしたモデルを手作業で細かく調整する
4調整したモデルをもとにソケット(切断部位を挿入する場所)を作る
5ソケットと部品を組み合わせる
6仮合せをし、確認・調整を行う
7確定したソケットの形状・角度をもとに、製品を組み上げる
8完成!
一つの義肢の製作には1~2か月かかります。一度製作したら一生使用するということではなく、私たちが毎日履いている靴と同様に、サイズや環境の変化、破損等に応じて、一生のうちに何度も作り変えていきます。
身体だけでなく生活にもフィットさせる
義肢製作所では、国家資格を有する3名の義肢装具士が、障がいのある方が自立し、安心して暮らせることを願いながら、日々製作に取り組んでいます。製作に際し、その方の切断部や全身の状態、お仕事の状況、性別、生活スタイル、活動度などを考慮し、その方に最適な義肢・装具の製作を心がけています。
当製作所では、年間約600件の義肢・装具を取り扱っていますが、製品のうち9割は更生用です。
更生用の義肢・装具とは、手足の切断であったり、脳梗塞等による麻痺の後遺症であったりと、治療が終わった後も障がいが続く方に対して製作されるもの。更生用は、治療用と違い、治るまでの間つけているものではなく、生活の中で使い続けていくものですので、身体にフィットさせるのはもちろんのこと、生活にフィットさせることも大切になってきます。
生活にフィットするとはどういうことでしょう?
例えば、農作業で泥だらけになる利用者に電子デバイスの入った義足を製作しても、すぐに壊れてしまいます。ちょっとした散歩を楽しみたい利用者に、多機能な義足を製作しても重たくて散歩がおっくうになるかもしれません。逆にいろいろな動作を求める利用者に、軽いことが売りの単純機能の義足を製作したら、活動範囲を狭めてしまいかねません。
更生用の義肢・装具を製作していると、さまざまなニーズに出会います。
使用するパーツ、素材、また完成時の形状を考え、それぞれのメリット・デメリットを上手に組み合わせなければ、生活の中で使える義肢・装具は製作できません。
私たちは、これからも利用者それぞれのニーズにお応えできるよう、さまざまな工夫をしながら製品製作に取り組んでまいります。
赤十字ならではの訪問サービス
手足に障がいを持つ利用者が、製作所まで来るのは簡単ではありません。そこで力を入れている活動が、利用者宅の訪問です。自宅や施設などへ出向き修理・調整などを行います。利用者からは「家から製作所まで距離があるので、いつも電話一本で来てもらえて助かっています」との声をいただいております。令和2年度の訪問回数は250回(延べ901人)にも上ります。
ご利用者の声
私の趣味は、バレーボール。中学生から始め、社会人になってからも地元のクラブチームに所属し練習に励む毎日を過ごしていました。ところが、20歳で交通事故に遭い片足を切断しました。気力を失い、「運動なんてもう一生できない」とバレーボールも諦めました。そんな時、チームの仲間から励まされ「またみんなと一緒にバレーボールをやりたい」という目標が生まれました。それが原動力となって、再び前を向くことができました。そして、義足の製作をしてくれた義肢装具士さんの手厚いサポートもあり、退院して6か月後にはコートに復帰することができました。義足をつけてバレーボールができた時の嬉しさは、今でも忘れません。義肢装具士さんには、復帰後もバレーボールがしやすいように義足を調整してもらったり、新たにバレーボール専用の義足を作ってもらったり…前向きに生きる力を支えていただきました。とても感謝しています。
義肢製作所についてさらに知りたい方は、「社会福祉事業(義肢製作所)」ページをご覧ください。
義肢・装具の製作や修理をご希望の方、また見学をご希望の方は下記までご連絡ください。
お問い合わせ先
- 日本赤十字社千葉県支部 義肢製作所
- 〒260-8509 千葉市中央区千葉港5番7号
- 電話番号:043-241-7535(義肢製作所直通)
- FAX番号:043-241-7586
- メールアドレス:gishi@chiba.jrc.or.jp
- 受付時間:平日の午前9時から午後5時まで