ウクライナ人道危機に際し、報道などで「国際人道法」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか?
今日「国際人道法」として知られるジュネーヴ条約は、世界196の国が加盟しており、世界で最も多くの国が参加する国際規範です。国と国との争いである国際武力紛争の場合も、一つの国の領土内で起きる内戦の場合も、そのどちらにおいても国際人道法を遵守することが求められ、ジュネーヴ条約の下、赤十字は人間のいのちと健康、尊厳を守るため、いかなる差別もせず、最も助けが必要な人を優先する「公平」、かつ一切の争いには参加しない「中立」の立場を維持して救護活動を行っています。
国際人道法とは?
国際人道法は武力紛争(戦争)時に適用される国際的なルールの総称※で、武力紛争(戦争)において負傷したり病気になった兵士、捕虜、そして武器を持たない一般市民の人道的な取り扱いを定めた国際法です。
※「国際人道法」という名称の条約は存在せず、「1949年のジュネーヴ四条約」、「1977年の二つの追加議定書」「2005年の第3追加議定書」を中心とした、さまざまな条約と慣習法の総称が「国際人道法」です。
国際人道法のルール
国際人道法の基本的なルールの一部をご紹介します。
1.傷病者は敵味方の区別なく救護する
国際人道法のルーツである1864年ジュネーヴ条約で定められたルールです。戦場で傷ついた負傷者や病人を救護するために各国赤十字社が組織され、救護のための医療活動を攻撃の対象にしてはいけません。
2.一般市民は絶対に攻撃してはいけない(住宅、民間施設等も同様)
戦闘員と一般市民、軍用物と民用物(軍事活動に貢献していないもの)を区別し、攻撃は軍事目標に限定しなければなりません。無差別な攻撃はもちろん、危険なエネルギーを内蔵するもの(原発、ダム、堤防等)、一般住民の生存に不可欠なもの(食糧生産のための農業地域、作物等)、文化財や歴史的遺産の破壊も禁じられています。
3.捕虜・抑留者は人道的に扱う
捕虜・抑留者の衛生・医療上の配慮、労働条件、居住環境、家族との通信、送還など広範な抑留条件を規定し、差別のない人道的な待遇が義務づけられています。
4.非人道的武器は使用しない
紛争が終わった後も影響が残る対人地雷やクラスター弾、失明をもたらすレーザー兵器、そして人道に反する核兵器等は規制されています。
参考動画
知っていますか?赤十字マークの意味
赤十字マーク(赤十字標章)は、戦争や紛争時に、負傷者を救護する人や施設等を保護するために表示するもので、ジュネーヴ条約において、このマークを掲げている救護員や病院等は、絶対に攻撃をしてはならないと定められています。
赤十字マークは、戦争や紛争などで傷ついた人びとと、その人たちを救護する軍の衛生部隊や赤十字の救護員・施設等を保護するためのマークなのです。
また、平時においても、人道的活動を行っている赤十字社の建物や車両、働く人等については、赤十字マークの表示が認められていますが、その使用については国内法によって厳しく定められています。
赤十字マークについて、くわしくは「赤十字マークの意味と約束事(日本赤十字社ホームページ)」をご覧ください。
戦争にもルールがある
国際人道法は、戦争がおこった時に犠牲者を保護するものです。そもそも戦争は国連憲章で禁止されていますが、現実には戦争や紛争は世界各地で起こっており、傷つく人々がいます。そのような現実の中で、犠牲者の苦痛を少しでも軽減するために国際人道法が必要なのです。戦争がもたらす不必要な犠牲や損害を防止するために、これまで経験してきた過去の多くの紛争の惨状を繰り返さないために、国際人道法は発展してきました。「戦争にもルールがある」という共通認識を、紛争当事者を含む社会一般に広めていくことが大切です。
国際人道法について、くわしくは「赤十字と国際人道法(日本赤十字社ホームページ)」をご覧ください。